アスフォデロの野をわたる途中で

忘却の彼方にいってしまいがちな映画・音楽・本の備忘録

政次Xデーはこわくない!おんな城主直虎第32回「復活の火」

殿と家老の取り替えゴッコが最大のツボでした。もう死んでもいい。

殿も政次も可愛すぎる。
 
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ああああ この政次の笑顔!
歯も見せて笑うんだよ、政次が歯を見せて笑うなんていつぶり???
 
そして小野家臣団。
黒子の政次のさらに黒子だった忠臣ズ。よっくここまでついてきた。
尊すぎて泣きそうでした。
 
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いい絵だなぁ。
清盛は「絵が暗い」「コンスターチまきすぎ」とか言われてたけど、このレンブラントの「夜警」みたいなショットはすばらしい。
 

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私もアムステルダム美術館で実物見たことあるけど、 わが国営放送技術スタッフ、レンブラントより全然いいぞ!
 
つい話が逸れましたが、最愛の殿からは、まるで新婚ごっこやってる恋人みたいに「殿」って呼ばれ、さらに自分の家臣団からは「小野家と井伊家が一体だって、んなこと前からわかってましたよ」って言われて、政次は本当に心が震えるほどうれしかったろうなと思います。
 

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不憫だ不憫だと言われてきた政次ですが、「政次Xデー」直前になってようやく報われた。もういいや。政虎デュエットの紅白見たし、今日が大晦日で、これからゆく年くる年で私は全然よいです。
 
「これで昼でも碁が打てるな」
 

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その明るい未来はない。永遠に来ない。

 

直虎と政次で虎松の後見として、殿と家老で碁を打ちながら、虎松を支える亥之介や直久ら次世代ズも育て上げ、老後も碁を打ちながら「そろそろ亀が待ちきれなかろう」と共に白髪となる未来もあったろうに。

 
そんな未来は一生こないのです。
 
その未来はこないのです。
 
大事なことなので2回言いました。
 
でもね、やっぱり人間はその時その時を大事に大事に生きていけば良いと思うのです。
私たちは史実を知っていますが、未来は誰にもわからない。
人はその時、その時の幸福をかみしめて、生きていけばよい。
「その時」がきたらその時のこと。
 
私は井伊の明るい未来を描いて「殿ごっこ」をしていた政虎と、「小野は井伊の再興のために戦う!」と高らかに宣言をした小野家は最高に幸せだったと、確信します。
 
だから、政次はちっとも不幸ではないのです。
 
政次Xデーはこわくない。
 
悲しいけど。無茶苦茶悲しいけど。その先、何を楽しみに生きていけばよいのかわからないけど。「ちゃぼつぐ」画面で探すくらいしか思い浮かばないけど。
 

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あー

生涯で最初で最後の愛の告白。

それをなっちゃんではなく、殿に直接言って、直接!!!

そして、いつも殿が手にしていた白の石。

大切にたもとに入れているなんて。。。。

もおおおおおお!!!!!

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予告を見ると直虎は龍雲丸から「あの人の井伊っていうのはてめーのことなんだぞ!」といまさらながらに鈍すぎてスルーしてた真実を突きつけられ、ようやく「政次の愛」に気づくんだろうな、っていう「我は取り返しのつかないことしてしもうた!!!」的展開なので、この政次ロスを殿がどうやって克服していくのが見どころかと思います。
 殿も視聴者と共に進んで行くのです!
 がんばりまっしょい!!!
 
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残酷で華麗なる最大の伏線回収回。おんな城主直虎第31回「虎松の首」まさつぐっ!編

政次です。

鶴丸です。

但馬です。

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 もう、これに尽きます。

「信じろ、おとわ」

「何を?」

と直虎は応えますが、何を、じゃないだろっ!

「徳政令はのぞまんに」の百姓たちの大合唱の中、第30回のラスト30秒から続く抜刀して直虎に刃を突きつけ「信じろ、おとわ」と切り札の幼名呼び。この31回からおそらく34回まで続く壮大なる「政次劇場」を開幕するにあたり、この31回は政次の「奸臣」としての役割をひっくり返していく大事な伏線回収回です。

小野家は井伊家より実は由緒ある家柄と言われ、井伊家の上を狙っているのではないか、と常に井伊家中から疎まれる存在です。

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そんな面倒くさい家に生まれた政次は、今井家のイヌにしか見えない父を軽蔑し、自分は絶対そんなものにはならない、と幼いながら心の中で誓います。

第4回「女子にこそあれ次郎法師」では、父の政直に「これ以上井伊の目の敵になることはやめてほしい」とストレートに訴えています。

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この20年後(適当)が、小野家の次期当主である甥の亥之助の第31回での政次との対峙です。

井伊家が潰れ、城を追われた後で、なぜか自分だけ井伊谷に残るように言われた亥之介は叔父の政次に「どうして小野家だけ井伊家と運命を共にしないのだ」と迫ります。

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この自分の後継者にすら、本心を明かさないアンビバレンツな小野家の伝統は、先代政直 aka 吹越満と心底生き写しであります。

第5回「亀之氶帰る」での、臨終前の父・政直とおとわとの対面。おとわには「全部井伊のためにやったんだよ。誰にもわかってもらえないけど」と言いつつ、その後政次には「あいつ甘いなー」的毒舌を吐いた後、「結局おまえも俺と同じ道をたどるんだよ」と呪いをかけます。

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 小野政直。本気で井伊谷を小野の手にしたいと思っていたのか、それとも政次と同じように偽りの盾となって今井から井伊谷を守っていたのか。もしかしたら人質にやった瀬名さまと恋仲だったのではー とか妄想は尽きませんが、本ドラマでは息子の政次は見た目もやってることも、父親の政直そっくりですが、心の中は小野家という狭い範疇ではなく、井伊谷に命を捧げている、ということをいよいよ31回から回収していきます。

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 「私には次郎法師さまや亀之氶さまと育んだ幼い頃からの絆があります」

これがもうすべてなんです、わかってあげてよ、おとわ!

 信じろ、おとわ!

ということで隠し里に逃れた直虎は、遂に一族に「政次は味方である」ということを告白。

これ、こんな情報開示やっちゃったら今までの但馬の血のにじむ努力が無駄になるのでは、とか最後までおとわと和尚様だけが真相を知っていた方がドラマチックなのでは、とかいろいろご意見あるかと思いますが、ホントに「但馬悪いやつ」と思っている視聴者もいるようなので、このくらいわかりやすくしてあげた方が但馬報われるかと思います。

 

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 実父を政次に殺されているというのに、この限りない六左の包容力。

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高瀬の場合、乙女の直感で政次の殿への思いを勘付いてるのではないか。

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 母上はつる・とわの仲を幼い頃から見守っていますからね。安定のうなずき

そして次世代からの但馬への熱い信頼!

これは胸熱であった。

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政次はいつも「どこで間違ったのか自分で考えるように」虎松たちに教え諭しながら囲碁の相手をしていた。敵ならばそんなしちめんどくさいことするわけがない。

虎松、ゆきの字の弟の直久、甥の亥之介の次世代たちと但馬の囲碁での交流は、第25回の「材木を抱いて飛べ」の冒頭で描かれています。

政次は、地味に龍潭寺での囲碁を通して次世代たちを育てていたのです。

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ということで遂に政次奸臣説はくつがえるに至ったが、肝心の殿が疑心暗鬼!

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 ま。こんな悪魔の笑顔を見せられると信じてる私でさえ一抹の不安を覚えるけど。。。

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 美しいなー

この対比。

虎松首実検は、私は「寺子屋」とか主人のために自分の子供の首を差し出すっていう歌舞伎を思い浮かべて「まさか亥之介?」と心底思いました。でも、それだと政次が「これぞ小野家のためだ!」って言ってるのと矛盾するので、違うなと。 

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うきゃー

「地獄へは俺が行く」っていうのは、家臣に向けてだったのか。

しかし、前回同様クラクラしたのは、次回32回予告です。 

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うわー

「小野が井伊家を再興する」

これこそ若き政次が父・政直に語った小野の「まことの勝利」ではないか!

いくさ支度は、手甲と同じグレーの鉢巻。やばい、やばすぎる。

そしてこの心配顔の美しい尼姿の直虎さまと、なんだかおだやかな政次。

楽しみすぎます。待ち遠しいです!

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残酷で華麗なる最大の伏線回収回。おんな城主直虎第31回「虎松の首」

「自己ワーストの視聴率10.6%!だから女大河は、、、」のメディアのバッシングに驚いて平日からこのエントリーを書いています。(結局休日にかかってますが。。)私はこんなすばらしい「女大河」はないと思っている断然擁護派だからです。

 もはやテレビの視聴率やマスメディアの記事に一喜一憂する根拠もないし価値もない。それはわかっている。それでもかつての巨大メディアのニュースの見出しを見て「そっか直虎面白くないんだ」と思う人がいるくらいは影響力があると思っています。それは悔しいです。だからこのようなブログという個人でも発信できる手段がある以上、微力ながら発信しようと思います。
 
つか、この今をときめく高橋一生が血塗られた短刀片手に「差し出せ」の字幕背負ってて面白くないわけな家老が!
 
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第31回への「地獄へは俺が行く」の予告を見て遂に政次Xデー本編が始まったか、これからは1回たりとも見逃せぬ!と心震わせた私は実はTVを持っていないので、毎日曜日本放映終了直後21時解禁のオンデマンド(もちろん有料)を心待ちにしています。私は結構IT系に特化している民なのです。視聴率はTVを持たない民は母数からも除外してるので、視聴率世界においては毎週有料で見ている私もこの世に存在していないも同じ。なんて理不尽な世界だ。
 
そして中世から近世への無茶苦茶理不尽な戦国の世界に生きる、名もない人々を「なんで戦国の三傑が出ないんだ?」(いや出てはいるんですが・・・)と言われながら地味に地道に30週に渡って描いてきた「おんな城主直虎」
 
第31回『虎松の首』は、この予告の高橋一生 aka 但馬守政次の短刀の鮮血はいったい誰のものなのか?まさか虎松の首??
ということが焦点となったわけですが、むしろ今後最大のクライマックスに向かうにあたり、1回目から30回目までコツコツと積み上げてきた伏線の壮大な回収回になったのではないか、というのが私の印象です。
 
その1。井伊の隠し里

 

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ああ、この政次の笑顔、次郎に寄り添う直親、豪快に笑うおじじさま、美しい井伊の隠し里。次郎の後ろの二人は既に亡く、最後の一人さえももうすぐ失われてしまう、という事実(フィクションだが史実でもあるな)だけで泣けてきます。
 
この懐かしい風景から8年後(えったったの8年??)寿桂尼の遺言により遂に百姓たちへの徳政令を受け入れ、その見返りに方久に莫大な借金を返さなければいけなくなった井伊家は財政的に破綻し、城を今川に明け渡さずをえなくなります。ひとまず「川名の隠し里」に身を隠すことした直虎以下の井伊家。
 

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第7回「検地がやってきた」 では、自己申告制「指出」に敢えて書かなかった隠し里を直親からの政次への無茶振りでみごと隠し通した井伊家を描いています。
 
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「この里は井伊のものではないのだろう」と直親から打合せなく振られ「なに言ってんの」ってプチおこの政次ですが、「この里は井伊のものではなく南朝の皇子様が隠れて住んだ里」と咄嗟の機転で検地奉行の追求を言い逃れ、結果絶妙の鶴亀連携プレーとして「そなたの父上と但馬が今川家より隠し通したもの」と直虎が虎松に語る31回に見事につながります。
 
去年の真田丸では「鉄火起請」が取り上げられ話題になっていましたが、直虎が「タイムスクープハンター大河」という異名を取ることになったのも、この「検地」を1回かけて丁寧に描いたことが初めでした。
 
そして、井伊家取り潰し、という最大の危機にその伏線がここに至って生きてきます。
おじじさまが直親に語った「隠し里」の由来。
「ここは、もしものときに、井伊の民が逃げ込むところでな。かつて、今川に追い込まれた時も、わしらはここに隠れ住み、時を稼ぎ、命脈を保った。ここは文字通りの最後の砦なのじゃ」(ドラマストーリーより)
 
おじじさまが直親に語った言葉を、直虎が直親の遺児、虎松に伝え、虎松はその意味を噛み締めながら、父から伝えられた笛を吹きます。その笛の音は、井伊の美しい隠し里に響いていきます。
 

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この黄金の稲田の美しい風景!
まるでナウシカが歩む黄金の原のようで、初回の「井伊谷の少女」というタイトルにもかぶってきて前半「ジブリ大河」と言われた所以ですが、この豊かな実りの風景を井伊家の人間はもちろん、現代人である私も後世に伝えてゆきたい、戦はいやだ、そう素直に思わせてくれる非常に美しい伏線回収です。
 
その2。徳政令

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 「なんで井伊が潰れるの」「井伊はどうなるの」

という家の者の疑問に直虎は「われもこんな話は聞いたことがないゆえ」と答えますが、私も戦国ドラマを長年見続けてきた中で、城が落ちることでしか家が潰れるのは見たことがありません。

経済的理由で家が潰れるなんて!

すごい斬新!

政令にまつわる書状しか直虎には残されていないわけで、唯一の歴史的事実をドラマチックにクライマックスに持ってくる、その力技にも驚かされますが、それもこれも第13回、第14回の2回にわたって直虎が安易に徳政令を受け入れて窮地に陥る、という伏線があるからです。

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絶体絶命の危機に陥った直虎ですが、この時は竜宮小僧というか、どこからか現れた亀の出現を機に策を練り直し、逆に瀬戸村の百姓たちの信頼を得るのです。

この時にはさすがタイムスクープハンター大河!徳政令ってこんなのか!(私は大ファンです)としか思ってませんでしたが、30回で「徳政令は望まんに!」と今川の侍たちに打たれて血まみれになりながらも唱え続ける百姓たちの声が、まるでお能地謡のようで、私の心から離れません。「徳政令」という無機質な歴史用語を、人々の人生を左右する血肉の通った事実として私たちに認識させるドラマなんて、そうそうあるものではありません。

 

 その3。人買い

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 さて、いよいよ「政次の短刀の血は誰のものか」問題ですが、政次が子供を買って虎松の身代わりにしたことが、龍雲丸によって直虎に明かされます。

第16回「綿毛の案」で、初めて龍雲丸に出会った直虎は、「人が買える」という話を聞いて「よいことを聞いた!」と単純に喜びます。綿を栽培するための人手集めに窮していたからです。

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城と寺で育った直虎は、竜宮小僧として里のために働いてはいましたが、本当の人買いの残酷さは知らなかったのでしょう。人に買われるということは、生死を人に委ねるということで、直虎の無邪気な反応を見て龍雲丸は珍しいものを見るような目つきをします。

家を守るために、ひとりの少年の命が失われた。此の期に及んで、ようやく人買いというものの非情さを直虎は知るのです。

 

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 単なるタイムスクープ大河ではなく、直虎の成長物語であることが本当にすごいのですが、ここまで、史実とはまたひと違う人間ドラマとしての細かい伏線回収がこれら以外にも地雷のように仕掛けられています。

少し長くなってしまったので、続きます!(たぶん)

 

#つづきを書きました。政次にフォーカス!!

yumi-kuroda.hatenablog.com

#殿の中の人のこの回へのブログが素晴らしかったので置いておきます。癒されてくださいませ。

おんな城主 直虎 第31回「虎松の首」

 観てくださって有り難うございます。

虎松の首として、偽首を差し出した政次。その首を見て、政次のそれに至る動向を知る直虎たち。様々な思いが交錯する回でした。私は現時点で34回まで編集したものを観ていますが、、33回、34回と・・・涙なくしては観られませんでした・・・。政次の、龍雲丸の、直虎の、皆の魂が、思いが、ぎゅっと詰まっています。来週は「復活の火」です。お楽しみに。

 そして本日は、広島原爆から72年。

 犠牲者の方々に、慎んで哀悼の意を捧げます。

これからも、“知ること” “想像すること” “考えること” “話しあうこと”

忘れないようにしなければなりません。

 

『美女と野獣』実写版:ダン・スティーブンスって誰?

今頃ですが、実写版『美女と野獣』を観ました。

ジャン・コクトー版ではありません。

遂に日本での興行収入が百億円を突破した、ディズニーのエマ・ワトソンとダン・スティーブンス版です!

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シェイクスピアについてエマじゃなくてベルにジョークを飛ばすまで人間化した野獣の青い瞳があまりに優しく美しく、CGなしで野獣&王子を演じたダン・スティーブンスって誰??

と思ったら思わぬイケメンでした。

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『ダウントンアビー』のマシュー!

運命のいたずらで伯爵になる青年弁護士を演じたダン・スティーブンス自身も、パブリックスクールからケンブリッジ校に通ったエリートです。

映画『ナイト・ミュージアム/エジプト王の秘密』でも円卓の騎士のひとり、ランスロットを演じていて、鎧姿もサマになる。

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謎の軍隊帰りの青年を演じる『ザ・ゲスト』

 

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いやー この体格だったら、堂々ビーストをCGなしで演じられるわけです!

 

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王子に戻った野獣が実はブサイクでもベルは愛したでしょうが、まあ、ハンサムだった方が話としてはわかりやすいですよね。

呪いをかけられた時の王子が「宮殿には美しい人しか集めなかった」と言うのですから、父を助けに単身魔窟に乗り込んだ少女が、勇敢で知性あふれるけどベルのように美しくなくブサイクだったとしたら、この寓話は成立しなかったのでしょうが。でも、たとえベルが絶世の美女でなくても、生き生きとした内面は明らかに外面に表れると私は思うので、野獣は恋したかもしれません。

 

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そしてこの話のキモは、「バラ」であります。

 

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美女と野獣』そもそもの原作は、wikipedeiaによると、父親が末娘のためのバラを野獣の屋敷で摘んでしまったことにあります。

 

3人の娘と3人の息子を持つ商人が、町からの帰り道にある屋敷に迷い込み、そこで体を温め料理にありつくというもてなしを受ける。商人が、「ラ・ベル(フランス語で「美女」という意味の一般名詞)」と呼ばれている心の清い末娘がバラを欲しがっていたことを思い出し、庭に咲いていたバラを摘むと、彼の前に屋敷の主である野獣が現れ、「もてなしてやったのにバラを摘むとは何事だ」と言う。そして野獣は娘を要求した。末娘は身代わりとして野獣のもとに赴き、野獣は娘に慇懃に求婚するが拒否される。

父親が床に臥せっていることを知ったラ・ベルの一時帰郷の申し出に、野獣は嘆きながらも許可を与える。ラ・ベルは一週間で戻ると約束をした。2人の姉は里帰りした末娘から豪邸での生活を聞き、嫉妬して妹を引き止め、日限に間に合わないよう仕向ける。10日目の夜、ラ・ベルは野獣が死にかかっている夢を見、屋敷に戻った。

ラ・ベルは瀕死の野獣に再会し、「これで幸せに死ぬことができる」という野獣に「いいえあなたはわたしの夫になるのです」とラ・ベルが叫ぶと野獣は本来の姿に戻る。

 

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父親が旅に出るときに娘たちに土産は何が良いかと尋ね、二人の姉はレースとかパラソルとか贅沢品をねだり(推測)、末娘はバラ一輪のみを願う」

というのは、『シンデレラ』と同じパターンです!

yumi-kuroda.hatenablog.com

そして父が娘へと持ち帰ろうとしたハシバミの枝やバラの花は、呪術的要素を持っています。ハシバミの枝はグリム版ではシンデレラにドレスやガラスの靴を降らせ、ディズニー版のバラの花は野獣の屋敷の呪いを支配します。

 

バラの花びらが全部散るまでに、王子が人を愛し人に愛されるという「真実の愛」を見つけなければ、王子たちにかけられた魔法が解けることはない、という縛りはグリム版にもコクトーの映画版にも見当たらず、ディズニーのアニメ版の特殊設定のようです。

 ダン・スティーブンスの話からずいぶん脱線しましたが、上映中ボロボロ泣いてしまいました。

自分の命を賭けてベルを狼から守ろうとする野獣も、放置して村に逃げ帰ってしまえばメデタシメデタシなのに敢えて傷ついた野獣を連れて城に引き返すベルも、人として尊敬できる。

今まで村にある数冊の本を繰り返し読むだけだったのに、城の何万冊もあろうかという広大な図書館を見せられた時のベルの喜び。初めてシェイクスピアの話ができる相手に出会ったベルのうれしさ。本当によくわかる。

愛する人と共に見る景色が今までとは違って見える野獣の驚き。

数々の歌もすばらしく、お話が全てわかっていても観て損はしません。オススメします。


 

手フェチとしての政次あるいは高橋一生

手フェチです。


男性はどうしても手を見てしまいます。
指は長くて細いのが理想。
全体の大きさは問いませんが、大きい方がセクシーかな。
爪はきっちり四角に切って磨いてあるのが良い。

それを思い出させたのが、『おんな城主直虎』の高橋一生さん。
手の所作が美しい!

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おとわが駿府に呼び出し!
という大危機に、脳ミソをフル回転させてる(はず)前夜の手の大アップ。
大サービスショットです。
長い指。そんなに背が高くないはずなのに、手のチカラとしては必要十二分。


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おとわが勝手に物見遊山!
後を追い駆けひと山越えてようやく追いついた茶屋で一杯。
ただの茶碗なのに名品に見える!
美しい手はもちろんですが、手甲と呼ばれるカムイ外伝みたいなテープぐるぐるもポイント高いです。だって、明らかに手の美しさを強調してますよね。

そして極め付け!


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きゃー
手が!
政次の手が柴咲コウちゃんの手を!
直虎を制しようと、とっさに出した手の指がこんなにキチンと揃ってるなんて、そうそうあることではない。
指先まで神経が行き届いたこのタッチはいったいなんなのだ。
直虎を守るために常に緊張感みなぎらせてるってことか。


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こちらはその前に駿府から直虎への死の召喚状を渡すところですが、この時に指先まで神経行き届いてるのは、まあ普通。でも美しい。


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ころんだ直虎に思わず手を差し伸べ、拒否られる政次。

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せっかく生きて帰って来たのに、愛するおとわの手を敢えて振り払う政次。

こんなに美しい手を持っている高橋一生こと政次ですが、おとわ様に手を取られることはもう一生ないのかしら。
もったいない。
実にもったいない。

三浦春馬の直親同様、痛ましいことがわかっている政次の最期ですが、せめて、差し伸べた手をおとわ様に取られることを祈ります。


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三浦春馬と高橋一成の化学反応『おんな城主直虎』

 

「ほぼ日」の森下圭子さんによる『おんな城主直虎」自作解説が非常に面白かったので、載せておきます。三浦春馬高橋一生の「役者による化学反応」によって脚本家の最初の意図とは違ったドラマに仕上がっているとのこと。

これは特に『検地がやってきた』で本来まっすぐなキラキラ王子様役の三浦春馬が「爽やかクズイケメン」として視聴者に認定され、腹に一物あるはずの高橋一生の方が「不憫なアンドレ」として一身に同情を集め、三浦春馬が非業の死を遂げるまで一種の逆転現象を起こしていたことを指すかと思います。
 
 
高橋一生演じる鶴の方が、三浦春馬演じる亀より信用できるんじゃないかと思えるドラマに仕上がっていたことに対して)
 
あ、それはね、芝居と芝居がぶつかったんですよ。わたしが書いたときの想定では、どちらかというと「直親正義」寄りに書いたんですよ。

三浦春馬さんの亀を基本的には鶴に警戒心はあるもののど真ん中のまっすぐな男に、高橋一生さんの鶴を引け目はあるものの信用のおけない男に書いているんです。最終的に、13話からの「城主編」の鶴を観てもらったらわかるんですけど、私が頭の中で動かしていた鶴は、はじめからあの「城主編」の鶴なんです。

私はそこまで難しくするつもりはなかったんですけど、仕上がったものを観て、自分もちょっと混乱するんですよ。「なんでそこで目が潤んでんの!」とか(笑)。「え、ちょっと待って、 こうなると悪いのどっちだよ!」みたいな。

あれは、私が思うよりウェットに解釈した高橋一生さんと、逆に、私が思うよりドライに解釈した三浦春馬くんが化学反応を起こした結果、と私は見ています。確認したわけではないので、あくまで妄想ですが。
 
妄想!いやー これは実に面白い話。
脚本家自身が、「あれ?自分の書いてたドラマと違う!」と感じ、これは高橋一生がいろいろな感情をカメレオンのように変化させて演じる一方、高橋春馬は思いっきり上っ面というか、爽やかな時はイヤミなくらい爽やかに、そして落ち込む時は思いっきり落ち込んでコントラストつけすぎたために、視聴者は逆に三浦春馬の方が胡散臭い、と感じてしまうという。これも私の妄想に過ぎませんが。ドラマって脚本家の手を離れて、役者や演出でどんどん変わっていくんだなぁ
第11回の『さらば愛しき人よ』での、おとわと直親の永遠の別れのシーンも、「柴咲コウ三浦春馬は本当にまた会えるかもしれないという気持ちでやっていたのかも」とおっしゃっている。
 

あれは、まぁ、実際、生きて帰ってこられないと確信しているから言えるんですよね。
あ、でも、わたしはそういうふうに書いてたけど、もしかしたら、春馬くんは「戻ってくる」という気持ちで言ってたかもしれないよ?
不思議なもんで、私が思ってもみなかった解釈をしながら、みなさんが演じることもしょっちゅうあるので、ほんと、わかんないですよ。私が書いたときは、もう戻ってくることは絶対ないだろうという気持ちで書きましたけど。だから直虎も「心得た」と言えたわけですが。演じているおふたりの気持ちは違うかもしれない。

 
あと、放映されてTwitterなんかでどんどん視聴者の解釈が付与されて、思いもかけない方向にころがっていったり。
三浦春馬クズイケメン説は、SNSなしではありえなかったもんなぁ。
 
 
でも、輝くような笑顔の後の憂い顔なんて、「この人は10年間の逃亡生活で闇を抱えざるをえなかったんだなぁ」と明らかに役に深みを与える演技で、すばらしいと私も思いました。
森下先生も以下のようにおっしゃっています。

あと、今回の『直虎』をやりながらふと思ったんですけど、春馬くん、これからは、悪い役をやったら、おもしろいんじゃないかと。
悪い三浦春馬くんが、観たい。いま、ものすごくそう思ってるんです。この人を正統派の美少年だけにしておくのは、もったいないんじゃないかと思って。すんげー悪い、悪いのに逆らいがたい悪の華みたいな美青年を一回やるべきだ(笑)。
おじさんになる前に!

 

いや、本当にこの最期の覚悟のシーンの表情は射抜かれました。
私も三浦春馬についてはイケメン以外になんの感慨ももっていませんでしたが(『わたしを離さないで』はカズオ・イシグロの原作が好きすぎて未見)「悪の華」みたいな美青年は観てみたいです。
 
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そして、柴咲コウがこんなに良いと思っていなかったので、これから年末まで本当に楽しみ。柳楽優弥も楽しみ。亀にもまた出てきてほしいな。鶴も飛んでくるのかな。

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花のような秀頼さまを鬼のようなる真田が連れて『真田丸』

真田丸について書いておこう。

 
41話目の『入城』ものすごく良かった。
全50話の残すところ10話になって、初めて主人公が主人公として動き始める。
Twitterで「いままでついてきた視聴者へのご褒美のような回」というつぶやきを見たけれど本当にそうだ。
 
38話『昌幸』で長い長い伏線の間、実質的に「主人公」だった父親の真田安房守昌幸が退場。39話でひと息ついた後、40話『幸村』で遂に「真田信繁」から伝説の「真田幸村」の名を選び取り、41話『入城』で最終章のファンタジーが動き始める。
 
大河以外のNHKのドラマは8-9話での完結が多く『ちかえもん』も9話だったけど、この最後の10話が『真田丸』の本体だ。
 
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ずっと青年のようだった堺雅人は、九度山での幽閉生活後は、一気に壮年の真田幸村へと変身する。9カ月というドラマ内での時間経過で主人公が顔付きまで変わるというのは、感動的ですらある。
 
そして、幸村の新しい主君となる豊臣秀頼の登場も、非常にワクワクさせるものだった。
 
 立派な若武者へ成長した豊臣秀頼と二条城で対面したことが、徳川家康をして「このまま秀頼を生かしておいては自分亡き後の徳川の世は危うい」と豊臣攻めを決意させたという逸話を、本当にリアルに再現してくれたこの場面。
中川大志のキラキラ感とカリスマ性が半端なく、思わず「ご無沙汰しておりまする」とまるで眼の前にいるのが信長のように平伏せざるを得なかった内野聖陽徳川家康がなんの違和感もなかった。
 
加藤清正と並んで遜色のない武者っぷり!
 
 
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中川大志といえば、あの『平清盛』で少年時代の源頼朝を演じ、マツケンの清盛と対面を果たした時の目ヂカラも非常に印象的でしたし
 
 
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 「前半は神作」と言われた朝ドラの『おひさま』でも、井上真央の子供時代の兄を演じて弟を養子に迎えに来た華族のおばあさまが乗る高級車に身体を張って立ち向かったときの凛々しさも忘れがたいものでありました。
 
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このときのおばあさまのクルマの運転手は『真田丸』の内記さんだしなー
 
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草刈正雄がホントに『平清盛』の父である平忠盛を演じた中井貴一さん以来「主人公を超えるインパクトあるパッパ」を演じてらしたので、お館様!と武田信玄を追ってあの世に行ってしまった後の喪失感を一気に18歳の中川大志が奪い去るとは!
 
いちまつの期待はしてましたが、まさかこれほど存在感のある秀頼になるとは思ってもいなかったので本当にうれしい限り。
 
最後の最後に真の主役となった堺雅人の幸村と、彼を照らす「聖なる光」にふさわしい中川大志の秀頼。 残り9話の「最終章」でのドラマが楽しみでなりません!