アスフォデロの野をわたる途中で

忘却の彼方にいってしまいがちな映画・音楽・本の備忘録

最初に聴いたのは、雨と哀しみ。どろろ 第4話

これは傑作だ。それも、ものすごい傑作。

1話目から思ってたけど、確信に変わった。

(ネタバレあります)

 

アヴァンで、今話の主人公、田之助が止むを得ず人を斬り、その血しぶきが飛ぶ。回想なので、モノクロの物語に血しぶきだけが赤い。

女王蜂のOPに変わり、ここもモノクロで要所だけがカラー。ドラマ性を象徴するカットが続き、そして毎度ほれぼれするアクションの百鬼丸の殺陣。

決めで麦人さまのナレーションによるタイトルコールと書による「妖刀の巻」

 

いやー完璧だ。完璧。

話を見る前で満足。いや、満足しちゃいかん。これから至福の23分だー

 

そして、本編オープニングは雨の中立ち尽くす百鬼丸

どろろによると、もう小一時間もこのまま。

雨を感じているんだ!

f:id:yumi-kuroda:20190129051956p:plain

 

と、第2話で神経を取り戻したことを知っている視聴者は思いますが、それを代弁してくれる本話のヒロイン、おすし。

「きっといいとこのうちの娘だろ?」と身なりだけではなく、その物腰で判断するどろろはなんて観察眼のある5歳児!

(原作では風呂に4年間入ってないらしいので、8歳くらいの可能性もある)

f:id:yumi-kuroda:20190129052929p:plain

f:id:yumi-kuroda:20190129053024p:plain

 

慈愛あふれるまなざし。

本作に出てくる女性は、みな強くて優しい。

 

今回感心したのは、(毎回そうだけど)設定がとてもしっかりしていること。

田之助が城主の命令で敵でもない味方を大量に惨殺することになったのは、砦を建設した大工たちの口封じのため。

設計の秘密を守るために、大工たちを殺すことは中世まで東西問わず行われていたことだ。フリーメンソンは、大工たちが自分たちの身を守るために結社を組んだことが始まりのはず。(曖昧な記憶ですが)

そして、どろろ田之助の「妖刀」を手にすることになるのは、原作と違って、田之助との最初のバトルで受け止めた刀と共に吹っ飛ばされた百鬼丸の左の義足を取りに行った時。

f:id:yumi-kuroda:20190129232105j:plain

刀を盗もう、という意図ではなく、偶然手にとってしまった妖刀がその魔力のために離れなくなる。

よくできてるなー

f:id:yumi-kuroda:20190129054326p:plain

f:id:yumi-kuroda:20190129054449p:plain

 

そして、遂にどろろの「アニキ」呼び!

妖刀が離れなくなったどろろと百鬼丸のバトルも見ものでしたが、魂の白い炎と赤い炎を見分けている百鬼丸は、妖刀だけを吹っ飛ばす。

疲れ切って思わず「アニキ・・」と呼びかけながら倒れかかるどろろを、百鬼丸は優しく支え、妖刀に呼ばれた田之助が登場すると、そっと傍に寝かせる。。。

f:id:yumi-kuroda:20190129054937p:plain

 

いいなー

この繊細な描写。

 

で、鬼神とのバトルに移るわけですが、百鬼丸に見えているのは妖刀の赤い炎だけ。あやつられている田之助はグレー。

 

f:id:yumi-kuroda:20190129055154p:plain

f:id:yumi-kuroda:20190129055353p:plain

 田之助自身は悪ではない。

なんで、どろろと同様に百鬼丸は妖刀だけやっつけるつもりだったと思うのですが、刀を装着した腕が抜けてしまい、流れでそのまま田之助を切ってしまう。

これもよくできてるなー

脚本は金田一明という方だそう。

 

そして今回、取り戻したのは耳!

f:id:yumi-kuroda:20190129055641p:plain

 

そうだよね。「声」の前にまず「耳」だよね。

聴覚が戻って、音が聞こえ始め、そして初めて人間の声を知ることになる。

初めて聞いたのが、雨。

そして雨の中、死んだ兄にとりすがるおすしの泣き声。

いやー

ほんとよくできてる!

人生初に聞いた音が雨と泣き声なんて、百鬼丸の人生の象徴かよ。

 

醍醐領では、また鬼神が倒されたことを知った父が、百鬼丸の行方探索の途中経過を聞いている。

対決する親子の暗示でエンド。

 

少々のかなしみと共にEDを聴いていると、なんとそのあとのカットが、どろろと百鬼丸がおすしに初めて出会った神社と、残された折り鶴二羽。

おすしは、小さいころ兄に折ってもらった折り鶴を大切に持っていたんだけど(年月が経ってるのでオリジナルかどうかはわからないw)、田之助が妖刀に呼ばれて出て行ったあと、もう一羽の折り鶴を見つける。

おそらく、妖刀と離れて少しだけ人間性を取り戻した兄が折ったものだと視聴者にもわかる。

白と薄桃色の折り鶴二羽は、「兄と会えますように」との願いを聞き届けてくれたお礼におすしが供えたもので、雨上がりの陽光にやさしく照らされている。まるで兄と妹がやさしく寄り添うように。。

田之助の魂はきっと解放されたし、おすしにもそれがわかったような希望の象徴に見えた。

f:id:yumi-kuroda:20190129061409p:plain

 オリヅルのモチーフも、世界的にわかりやすいね。ブレードランナーみたいだ。

百鬼丸の鬼神退治は、悲しい気持ちになることが多いけど、今回は少し救われた気がする。

本当は優しかった田之助が、優しいがゆえに狂っていくさま、正気になる瞬間、救われた最後。(死んじゃうけど、最後に妹に会えたのはよかったんじゃないか)

原作も傑作回と言われてるけど、今回のアニメもすごかった!

 

で、これから百鬼丸は感覚だけではなく、聴覚を得て一気に世界が広がるんだろうなー

ほんとに赤ん坊が成長していく過程のようだ。

そのガイドをつとめるのが、どろろ。そして琵琶丸。 

「声」を取り戻すのはこのあと、みおを失った時のような予感。

最初に発するのも悲しみと怒りってのも、スクワレナイけど。。。

 

って思ってたら次回、なんとみお登場ではないか!


TVアニメ『どろろ』 第五話「守り子唄の巻・上」予告

 

そっか。後編の6話目がクール前半のクライマックスなのか。

この構成は神だ!

ほんとに来週が待ちきれない!!!

 

追記

アニメにはまると海外の感想も追ってしまうのだけど、やはりブレードランナーを思い出す人が多い。

雨がずっと降り続く世界、虚無<ニヒル>を抱える敵役、闘うレプリカント。。

All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to die.

「そんな思い出も時と共に消える。この雨の中の涙のように。死ぬ時が来たようだ」

 

ルトガー・ハウアーが最期に語る言葉。とても好きな映画で、世界中の人に同じような世界観を想起させるって、やはり名作だなぁ。(まだ4話 笑)

Dororo - Episode 4 discussion : anime

 

f:id:yumi-kuroda:20190201040858j:plain