アスフォデロの野をわたる途中で

忘却の彼方にいってしまいがちな映画・音楽・本の備忘録

行ったり来たり、その後。政次は戻って来た。そして直虎を現実につなぎ留めていた母上が逝ってしまう。。

はい。

『おんな城主直虎』も残すところあと6回。スダマこと菅田将暉の直政が表舞台でわかりやすい出世物語を展開しておりますが、それは土曜時代劇的8回完結ものな味わいとして、その裏では1年かけて描いてきた直虎の物語がゆるやかに終幕を迎えようとしております。
 
やはり政次ロスと言いますか、34回以降あまり何かを書きたいと思わなかったのですが、先週の44回『井伊谷のばら』での祐椿尼こと母上の退場には心を動かされました。
 
彼女は非常に有能な「奥方」として井伊家を支えてきた人物です。井伊家にとっては「敵」であった今川系の新野家から典型的な政略結婚で嫁いで来た女性。にもかかわらず、後に井伊家を再興する直政を直虎と共に育て上げ、井伊家を磐石にした功労者でもあります。ここまでは史実の通説。
 
物語としての母上は、常におとわを「今いるべき場所」につなぎとめる非常に大事な役割を果たしてきました。
 
おとわの少女時代は「お転婆」の域を超えて無茶苦茶です。
鬼ごっこで鶴に捕まりたくないから滝壺に飛び込む。
亀の身代わりに衣服を取り替えて追っ手に捕まる。
鶴と結婚したくないから家出して解死人に捕まる。
今川の人質になりたくないから氏真と蹴鞠合戦をする。
ここまでで既に4回死んでてもおかしくない状況です。
 
男子の死亡率が常に女子より高い事実は、男子が冒険好きとか名誉を重んじるとか「現実より離れやすい」特性からきていると聞いたことがあります。
 
おとわは女子ですが、やってることは地に足ついてないというか、「7つまでは神のうち」という言葉通り「あの世とこの世の間にある存在」でありいつあっちの世界に行ってしまってもおかしくない子どもでした。
(たけの苦労がしみじみ偲ばれる。。)
 
そんなおとわが出家。
 
出家先の井伊家の菩提寺龍潭寺は、アジールとして機能していたようです。
一歩門を入って「山林!」と叫べば俗世の全てから縁が切れる。

 井伊谷龍潭寺は井伊家の菩提寺である。そこに駆け込めばそれまでの因縁を断ち切れる、過去の柵(しがらみ)を免除されると思われていたわけだ。これを「無縁所」とも言った。アジールだったのである。
 のちの「井伊直虎置文」では、そのような悪さをしてきた「非法の輩」が駆け込んできたときの対処の仕方について述べていて、理非の決断が井伊家の旦那に任せられる場合と龍潭寺の住持が決めていい場合とがあることが明記されている。アジールではあったが、それを決定するにはいくつかのルールとロールの選択があったようなのだ。

建前的にはたとえ今川の兵が追って来ようと、おとわであろうが、亀であろうが、虎松であろうが手を出すことはできなかった場所です。
そして龍雲丸も。

おとわは何度か出家を躊躇ったり諦めようとしますが、そのたびに母にたしなめられます。
 
母はあなたを誇りに思う、家のために身を捨てられる姫なんてそうそういない、「まさに三国一の姫!」とおだてあげて出家を促す母上。
 
本領安堵の引き換えとした出家なのに途中で諦めるなんて「あなたは井伊家を潰す気か」、空腹に耐えかねて戻って来た次郎を追い返す母上。
 
ゲートキーパー的な役割。

でも、それもこれも「アジール」である龍潭寺に可愛い娘を守ってもらうため、そう考えられます。
 
猛獣の子どもみたいだったおとわも、柴咲コウさんになってからは、龍潭寺での修行のおかげか、住民たちと共に生きる立派な僧侶になっていました。
 
しかし、許婚の直親の帰還により、彼女にまた「居場所」の危機が訪れます。

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今川の謀略によって暗殺された亀に連れ去られそうになるおとわを取り戻すために、渾身の力を込める母上!

鳥肌が立ったなぁ。
まるで陰陽師の戦いみたいだった。
財前直美さんはあらためてすばらしい役者さんだと思いました。
 
そして、ようやく本題に戻りますが、44回の『井伊谷のばら』。
この冒頭、おとわがまたもや現世から連れて行かれそうなシーンがあります。
母娘で立花を楽しむ、とても平和な光景なのですが。
 
スダマの初陣が決まり「戦は何が起こるかわからない」と動揺したおとわは、指を刺してしまい、人差し指にポツンと赤い血の玉が噴き出します。
 
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はっとしたのは、母娘だけではなく、視聴者もそうです。
 
私は思わず、政次処刑の後に、おとわの白い頭巾に宿った赤い血の点を思い出してしまいました。
 
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無血開城のはずだったのに、近藤の讒言にはまり、反逆の首謀者として直虎自ら処刑してはならなくなった政次の返り血。
 
戦になってしまえば、何が起こるか誰にも予想できない。
暴力装置である軍隊により戦争が始まってしまうと、人智によるコントロールはもはやきかないのです。
 
楽勝を予想されていた桶狭間の合戦に負け、首桶となって帰って来た父。
 
隠し港に救援軍として迎えたはずだった家康の軍に、無惨に殺されてしまった龍雲党の仲間たち。
 
一滴の血が、おとわに、そして祐椿尼に、これまで失ってきた大切な人たちの命の記憶を、あざやかに甦らせたに違いありません。

政次の死の後にオフェーリアのように精神の均衡を失ったおとわ。
ここでまた「あちらの世界」に行きそうになっても不思議ないこと。

しかし母は強い。

慄くおとわの手を優しく取り「指を突いただけです」と諭す祐椿尼。

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自身も首で帰って来た夫のことを思い出したでしょうに、「赤い血」は呪いでも予言でもなく、短に日常的によく起こる些細な傷であると娘に言い聞かせる気丈な母の姿。

おとわはまた現実に留まることができたのです。

44回は母娘の関係としてさらに劇的なクライマックスが待っているのですが、
アバンだけで泣けました。

残り6回で最後の幼なじみも失ってしまうおとわ。
もう、彼女を引き留める強く優しい母はいない。
寂しいことですが、おとわ自身が自分の人生に対して満足していることを知ることができた貴重な回でもありました。

この物語、最後まで見届けます!







サウダージ、いまここに存在しなくてさびしいということ。『おんな城主直虎』第34回

サウダージというポルトガル語がとても気になっていました。
 
あなたがいなくて寂しい。
 
郷愁、憧憬、思慕、切なさ
いちばん近い言葉は「ノスタルジア」だと言います。
 
単なる郷愁(nostalgie、ノスタルジー)でなく、温かい家庭や両親に守られ、無邪気に楽しい日々を過ごせた過去の自分への郷愁や、大人に成長した事でもう得られない懐かしい感情を意味する言葉と言われる。だが、それ以外にも、追い求めても叶わぬもの、いわゆる『憧れ』といったニュアンスも含んでおり、簡単に説明することはできない。(wikipedeia)
 
33回は神回でしたが、34回は鬼回と言っていいほど、さらにすばらしい出来でかつ心を抉る辛い回でした。
政次を失ってまるでオフェーリアのように夢うつつで少女と城主の間を行き来する直虎の姿を見て、なんだかこの saudade という日本語には翻訳できない言葉が頭に浮かびました。
 
少しだけ長くなりますが、おつきあいください。
 

去年ピエール・バルーというフランスの音楽家が亡くなりました。名画『男と女』のダバダバダ〜♪ の有名なコーラスをご存知の方もいらっしゃるでしょう。


Un Homme Et Une Femme de Claude Lelouch

 

「サラヴァレーベル」というこれも「サラヴァ」=「あなたに祝福を」というポルトガル語から取ったボサノヴァの音楽レーベルを設立し、晩年は日本人の奥様を得て渋谷にイベントスペースも開いています。

フランス文学と音楽に造詣が深くピエール・バルーと親交もあった芥川賞作家の堀江敏幸さんが、そのイベントスペースで彼の最後の日本公演前後の様子を語るのを聞いたのですが、ライブ前は寝たり起きたり日常も覚束ないのにライブになるとしゃんとしてすばらしい歌声を聴かせる姿を見て「ああ、これはピエール・バルーの言う ”ca va, ca vient"(行って、帰る)だな」と思ったそうです。あの世とこの世を行ったり来たり。
 
その「サヴァ・サヴィアン」というフランス語が、「サウダージ」なのだとピエール・バルーは言っていたとのこと。(同じ名前のアルバムもあります)
 
行って、帰る。
行ったり、来たり。
 

 サウダージは、「何か」又は「誰か」から距離が離れていること、又はそれが無いことにより引き起こされる感情をいいます。言語の由来は、ラテン語で孤独を意味する”solitas, solitatis”にあります。ブラジル人がサウダージを感じる時、過去に起こったことの記憶、また過去の経験をもう一度経験したいという強い感情を抱きます。恋愛の詩や歌詞に使われることが多い言葉のひとつです。
言い伝えによると、サウダージポルトガル人がブラジルを発見した時代に造られた言葉だということになっています。祖国や家族から遠く離れて、ブラジルに到着したポルトガル人が抱いた感情が「サウダージ」という言葉になったのでしょう。 
世界で最も翻訳しにくい単語、サウダージの意味

 

 

何かがここにないことで引き起こされる感情。

 

ああ、これは井伊谷なんだろうなぁ。

 

と思いました。

 

直虎が碁盤の上でさまよっていたのは、

甚兵衛たちと綿毛を育て、龍雲党と材木を切り出し、

殿として治めていた井伊谷の領地。

そして、鶴や亀と駆け回っていた幼い頃の井伊谷

 

和尚様から「いっしょに策を考えよう」と言われて「はい」とうれしそうに微笑む直虎は少女の顔をしていました。

 

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井伊谷三人衆の策にはまり、瀬戸村や祝田村の領地を失った直虎。

そして政次という生まれてずっといっしょだった伴侶を失った直虎。

この後さらに武力でなく信頼という力で勝ち取った気賀の地も、龍雲党と共に失います。

井戸脇に「もたらされた」政次の辞世を見、そして気賀の危機を聞いて現生に「帰って来た」直虎ですが、心の中にはずっと失ってしまった「井伊谷」がある。

 

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予告では「政次は生きているのだ」という直虎の言葉がありました。

政次は「行ったり、来たり」するのです。

直虎の心の中に、政次は井伊谷と共にずっと生きている。

政次は35回できっと戻ってきます。

どんな形なのかはわからないけど。

亀も、ほんとに亀の形で戻って来ましたよね。

 

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失ってしまってさびしいだけではなく、遠くにあって会えないだけでなく、サウダージの心というのは、失ってしまったものと共にある(いつでもではない)ということではないのかなぁ、と私は考えるに至りました。

人間は得るものもあるけれど、おとなになればひたすら失ってしまうばかりです。

でも、本当にそれは失われただけなのだろうか。

目の前にはなくても、目の前には見えないけれど、たまに帰ってくることがあるのではないのだろうか。

そんな気持ちで35回を見守ろうと思います。

# ピエール・バルーの亡くなる前のインタビューを置いておきます。彼の歌を聴けば、きっと私たちも「あっち」と行ったり来たりできるのでしょう。

その人が「道しるべ」だった。- ほぼ日刊イトイ新聞


追伸。

ようやく「鶴のうた」が届きました。さすが、33回の台本を読んで菅野よう子さんが1週間寝込んだのち復活して書き上げた渾身の曲集。

初回限定のフォトブックの最後の見開きが、まさに「サウダージ」でもうなんと言ってよいのやら (☍﹏⁰)。。。。

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直虎は凄い。政次は幸せだ。歴史に残る第33回『おんな城主直虎』〜嫌われ政次の一生〜

神回。ってよく言われるけど、これこそ神回ではなかろうか。

プロデューサーも脚本家も意図していなかった結末。

物語世界にはよくあることで、作者も思いもしなかったストーリーが勝手に動き出す。登場人物たちが、人間の意図を超えて勝手に動き始める。今まで積み上げてきたものの集大成。奇跡の着地点。

見終わったあと、私は物語世界に圧倒され、ある種の清々しさしか感じませんでした。

すごい!役者もスタッフもやりきった。神様が降りてきた。

 

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直虎が政次の死を見届けるため刑場に向かう。

それは予想がつきます。

しかし、この物語はその先をいく。

誰も予想もしなかった先をいく。

プロデューサーも脚本家も思いもしなかった先をいく。

AERAの岡本制作統括のインタビューが非常に印象的でした。 

本の森下佳子さんも「こうしよう」と考えて、理屈の上で、あの(処刑の)シーンを決めたわけではないと思います。森下さんの中で2人の関係を紡いで、積み重ねていったらこうなってしまった。政次最期のシーンについて、森下さんと事前にそこまで細かくは打ち合わせをしていなかったんですが、私も森下さんも「処刑場に行って、直虎がお経をあげる」とかかな、と思っていました。でも、書いているうちにああいう形になったそうで。ある日の夜に初稿が私のところに送られてきて、読んだ後、大泣きしてしまい……。その後、急激に眠気が襲ってきて、そのまま寝てしまいました。これは受け止めきれない、と。

そうです。

直虎が「自分が引導を渡す」と刑場へ赴く。そこまでは予想がつきます。

直親の時は立ち会えなかった。

でも、政次は立ち会える。

でもね、わざわざ龍雲丸が救いに行ったのに政次は「本懐を遂げるため」と白の碁石だけ龍に託して返すんだよね。

この石は直虎と政次の魂の交流の証。

直虎はいつも政次の打ってきた黒の先手を白の後手で受けてきた。

次はおまえの番だ。

碁石を受け取った直虎は政次の最期の意志をどうとらえればよいのか一晩考えぬくのです。

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考えに考えた末、出した結論。政次の意志に応えるためには、そして井伊にとって最善の策をとるためにはどうすればよいのか。


それが自ら小野但馬を処刑する、です。

井伊を今川の国衆ではなく、徳川の味方として認めさせる。

そのために政次が打った最善の策を、直虎は断腸の思いで受け止め、政次のさらに上を行く策で完結させる。

 政次は刑場で直虎を認め、心中ではああ、これで俺は本当にこころおきなく死ねる、と思ったと思うのです。

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私はこの水辺の光景を見て、折口信夫の『死者の書』の大津御子の処刑の場面を思い浮かべました。御子はその刹那に大職冠の娘を目にし、亡霊となってからも恋するのです。

はっきり聞いたのが、水の上に浮いている鴨鳥の声だった。今思ふと、待てよ。其は何だか一目惚れの女の哭き声だった気がする。をを、あれが耳面刀自だ。其瞬間、肉体と一つに、おれの心は、急にしめあげられるような刹那を、通った気がした。俄かに、楽な広々とした世間に出たやうな感じが来た。さうして、ほんの暫く、ふっとそう考えたきりで・・・・

空も見ぬ、土も見ぬ、花や、木の色も消え去った

 でも、われらが殿、直虎はそんな文学クラスタの甘い思惑など吹っ飛ばします。

自ら槍を取り、まっすぐ政次に向かう。

視聴者の、いえ政次の想像のさらに上を行く。

ああ、さすがはおとわだ。俺が生涯を賭けるかいのあった女だ。

政次は本当に幸福な気持ちだったと思います 

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呆然とする近藤家中たちに一礼し、直虎は無表情でひとり立ち去ります。

たったひとりで。

わずか2分間のできごと。

前出した岡本Pのインタビュー

私もつくりながらぐったりしてしまったんですが、音楽担当の菅野ようこさんも普段はパワー全開な方なのに、第33回の脚本を読んで10日ほど熱で寝込んでしまって……。森下さんも書き終えたときは虚脱状態でしたし、キャストもみるみる集中していきました。

(直虎役の)柴咲さんからは「台本を読んでこんなに衝撃を受けたことはない」と言われました。財前直見さんもちらっと「ものすごい愛の形よね」とおっしゃっていましたね。(高橋)一生さんからは本を読んだ感想自体は聞いていませんが、「『磔(はりつけ)にされて、槍で突かれ、血を吐いて死ぬ』なんてシーン、これまで大河ドラマにありましたっけ?」という話をしました。

 

六左衛門役の田中美央さんのブログにも、台本を読んでからの高揚と厳粛な気持ちが描かれています。

 

おんな城主 直虎 第33回「嫌われ政次の一生」

 この日の撮影前後の事は良く覚えています。

 「あのシーンの撮影はいつなのか?」

 キャスト、スタッフ、皆、口には多く出しませんでしたが、誰もが気にしている様子がヒシヒシとスタジオ内にありました。

 「いついつらしいよ」

 「自分の撮影は無いのだけれど見守りに行きたいね」

 「行きたい、行きたいよ」

 そんな声がチラホラ聞こえるも、

「これは二人だけの世界、邪魔してはいけないよね」

 と、

 皆がお二方を慮り、シーンの関係者のみで静かに撮影が行われたと聞いています。

 

撮影後、

 翌週のスタジオには、まるで上級生が卒業してしまった校舎のように、

 何も変わらないのに、確実に一人分、何かが足りない、そんな空虚さを感じずにはおれませんでした。

 今夜、素晴らしいものをみせて頂きました。

 一生さん、本当に有難うございました。

 

「ふたりの世界を邪魔してはいけない」

そんな心遣いがとても尊い

 

方久役のムロさんもtwitter

 

柴咲コウさんと高橋一生さんの一世一代の名演といってよいのではないでしょうか。

演出は平清盛の「叔父を斬る」と「友の子、友の妻(義朝の最期)」の渡辺一貴さん。

最高だわ。。。

 

そして辞世の句。

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「白黒をつけむと君をひとり待つ 天つたふ日ぞ 楽しからずや」

 白黒をつけようと君をひとり待つ。夕暮れも楽しくないことがあろうか。

これが直訳。

柿本人麻呂万葉集に次の句があります。

「天つたふ 入り日さしぬれ 大夫と思へるわれも 敷袴の衣の袖は 通りて濡れぬ」

夕日がさしてくると、雄々しい男だと思っていた自分も、逢瀬に敷いた着物の袖が涙ですっかり濡れてしまったよ、という妻を恋う歌です。

「天つたふ」というのは「日」にかかる掛詞で、「入り日」を意味し、日が沈む頃、つまりは妻問いの時間のことをさすそうです。

政虎の夜な夜なの囲碁デートは、やっぱり妻問いの時間だったのですね。。。

 

政次の返り血を真っ白な頭巾に一滴だけ残し、白昼夢のような龍潭寺の一室で、碁盤の前にたたずむ直虎。これが過酷なる現実です。

 

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「つづーく」

と心なしかいつもとはちょっと違って聞こえる、中村梅雀さんのナレーション。

そうなんです、直虎の物語は続くのです。

いいなずけを失い、鶴翼のつばさを失い、それでも直虎の物語は続くのです。

政次ロスなんてもったいない。

涙をふいて、しっかり赤い目を見開いて、これからも私は愛すべき井伊谷のこれからを見届ける覚悟です。

 

政次がひっそりと持ち帰った白い碁石。それは生涯かけて守ると誓った想い人の形代。「おんな城主直虎」第32回補足

こちら私の直虎専用ツイッターのつぶやきですが、月夜のデート碁の翌朝、直虎からの逆プロポーズ(?)を断った翌朝、なつへのプロポーズを敢行した翌朝、政次の着物のたもとからこぼれ落ちた白い碁石

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なつは「何、これは?」と白い石を見つめるわけですが、視聴者は知っている。直虎と政次のデート碁はなぜか必ず政次が黒の先手、直虎が白の後手。これは昨晩の直虎が打った白の一手です。
 
なぜ、その白の碁石が政次の着物から??
 

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前夜の出来事をおさらいしてみます。自分から龍潭寺の直虎の元にやって来た政次。
さっそくふたり碁盤をはさみますが、胸熱の「殿とりかえごっこ」を経て、徳川からの書状、そして「政次に主の座を譲ってもいい」の直虎還俗するから俺の嫁になるのか!(殿はそこまで考えてない感じだったけど)発言があります。
 

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政次、沈黙。高橋一生の喉仏がごくりと動く。

「では、還俗して俺の嫁になるか?」

とこの三十数年間ずっと思い続けてきたことは口に出さず、代わりにどんなに直虎が領主として慕われているかを語り始めます。

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やっといちばん認めてもらいたかった政次に、遂に「もはや降りることは許されぬ」とまで言われ泣いてしまったおとわ。政次はやおら碁盤を片付け始め、うわっ 政次ついにここで主従の垣根を取っ払っていっちゃう??? とみな固唾を飲んだと思うのですが、そんな真田丸なことは起こらず。

さっさか 明るい月夜の元に碁盤を運んで行きます。満ち足りた表情の政次。

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さて、問題です。
このあと、ふたりの囲碁は続いたのでしょうか?
盤上には、白く輝く直虎の一手。
 
「もうすぐ夜じゃなくて昼間堂々と囲碁が打てるよね!」的明るい井伊の未来を殿が無邪気に語ったあと、「はい」と応えた政次はそのまま立ち上がってやおら「おとわ」と次郎をお姫様抱っこをして。。
 
てなことは残念ながら起こらず、多分このまま解散したんだと思うのです。
話したいこと全部話しちゃったし。
 
で、政次は、盤上に残った直虎の置いた白の石を、そのまま大事に袂に入れて持ち帰ったのではないかと。。。
 
ようやく自分の気持ちにも決着がついた。(きっと政次も碁盤をはさんで直虎に話しているうちに気持ちが固まっていったはず)これからも何があっても生涯をかけて守り抜いていく大切な大切な人。その人が唯一、自分と心を通わせる手段として幾夜も幾夜も越えて手にしていたもの。長いトンネルを抜ける最後の夜に手にしていたもの。
 
それが直虎が打った白の碁石です。
(碁を終えて屋敷に帰ってきた政次は本当におだやかな表情をしている)
 

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その石が翌朝コロリと転がり出た。
 
なつは、その石をどうしたかなぁ。
 
「こんなものが出てきましたが」と渡せば、それが政次の六文銭になる。
 
闇の中で、次郎法師の白い頭巾だけはほの明るく、考えてみればおとわはマリア様のようにけがれのないヴァージンでもある。「地獄へは俺が行く」と言い放った政次は、いまさらおとわを嫁にどうとかは考えてもいないだろう。一瞬心が揺らいだように見えたけど(そこはイッセイさんの魔法)自分は黒子に徹し、おとわは民のために捧げる。
 
第33回、果たしてこの白い石は出てくるのだろうか。。。
 

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政次Xデーはこわくない!おんな城主直虎第32回「復活の火」

殿と家老の取り替えゴッコが最大のツボでした。もう死んでもいい。

殿も政次も可愛すぎる。
 
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ああああ この政次の笑顔!
歯も見せて笑うんだよ、政次が歯を見せて笑うなんていつぶり???
 
そして小野家臣団。
黒子の政次のさらに黒子だった忠臣ズ。よっくここまでついてきた。
尊すぎて泣きそうでした。
 
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いい絵だなぁ。
清盛は「絵が暗い」「コンスターチまきすぎ」とか言われてたけど、このレンブラントの「夜警」みたいなショットはすばらしい。
 

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私もアムステルダム美術館で実物見たことあるけど、 わが国営放送技術スタッフ、レンブラントより全然いいぞ!
 
つい話が逸れましたが、最愛の殿からは、まるで新婚ごっこやってる恋人みたいに「殿」って呼ばれ、さらに自分の家臣団からは「小野家と井伊家が一体だって、んなこと前からわかってましたよ」って言われて、政次は本当に心が震えるほどうれしかったろうなと思います。
 

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不憫だ不憫だと言われてきた政次ですが、「政次Xデー」直前になってようやく報われた。もういいや。政虎デュエットの紅白見たし、今日が大晦日で、これからゆく年くる年で私は全然よいです。
 
「これで昼でも碁が打てるな」
 

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その明るい未来はない。永遠に来ない。

 

直虎と政次で虎松の後見として、殿と家老で碁を打ちながら、虎松を支える亥之介や直久ら次世代ズも育て上げ、老後も碁を打ちながら「そろそろ亀が待ちきれなかろう」と共に白髪となる未来もあったろうに。

 
そんな未来は一生こないのです。
 
その未来はこないのです。
 
大事なことなので2回言いました。
 
でもね、やっぱり人間はその時その時を大事に大事に生きていけば良いと思うのです。
私たちは史実を知っていますが、未来は誰にもわからない。
人はその時、その時の幸福をかみしめて、生きていけばよい。
「その時」がきたらその時のこと。
 
私は井伊の明るい未来を描いて「殿ごっこ」をしていた政虎と、「小野は井伊の再興のために戦う!」と高らかに宣言をした小野家は最高に幸せだったと、確信します。
 
だから、政次はちっとも不幸ではないのです。
 
政次Xデーはこわくない。
 
悲しいけど。無茶苦茶悲しいけど。その先、何を楽しみに生きていけばよいのかわからないけど。「ちゃぼつぐ」画面で探すくらいしか思い浮かばないけど。
 

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あー

生涯で最初で最後の愛の告白。

それをなっちゃんではなく、殿に直接言って、直接!!!

そして、いつも殿が手にしていた白の石。

大切にたもとに入れているなんて。。。。

もおおおおおお!!!!!

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予告を見ると直虎は龍雲丸から「あの人の井伊っていうのはてめーのことなんだぞ!」といまさらながらに鈍すぎてスルーしてた真実を突きつけられ、ようやく「政次の愛」に気づくんだろうな、っていう「我は取り返しのつかないことしてしもうた!!!」的展開なので、この政次ロスを殿がどうやって克服していくのが見どころかと思います。
 殿も視聴者と共に進んで行くのです!
 がんばりまっしょい!!!
 
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残酷で華麗なる最大の伏線回収回。おんな城主直虎第31回「虎松の首」まさつぐっ!編

政次です。

鶴丸です。

但馬です。

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 もう、これに尽きます。

「信じろ、おとわ」

「何を?」

と直虎は応えますが、何を、じゃないだろっ!

「徳政令はのぞまんに」の百姓たちの大合唱の中、第30回のラスト30秒から続く抜刀して直虎に刃を突きつけ「信じろ、おとわ」と切り札の幼名呼び。この31回からおそらく34回まで続く壮大なる「政次劇場」を開幕するにあたり、この31回は政次の「奸臣」としての役割をひっくり返していく大事な伏線回収回です。

小野家は井伊家より実は由緒ある家柄と言われ、井伊家の上を狙っているのではないか、と常に井伊家中から疎まれる存在です。

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そんな面倒くさい家に生まれた政次は、今井家のイヌにしか見えない父を軽蔑し、自分は絶対そんなものにはならない、と幼いながら心の中で誓います。

第4回「女子にこそあれ次郎法師」では、父の政直に「これ以上井伊の目の敵になることはやめてほしい」とストレートに訴えています。

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この20年後(適当)が、小野家の次期当主である甥の亥之助の第31回での政次との対峙です。

井伊家が潰れ、城を追われた後で、なぜか自分だけ井伊谷に残るように言われた亥之介は叔父の政次に「どうして小野家だけ井伊家と運命を共にしないのだ」と迫ります。

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この自分の後継者にすら、本心を明かさないアンビバレンツな小野家の伝統は、先代政直 aka 吹越満と心底生き写しであります。

第5回「亀之氶帰る」での、臨終前の父・政直とおとわとの対面。おとわには「全部井伊のためにやったんだよ。誰にもわかってもらえないけど」と言いつつ、その後政次には「あいつ甘いなー」的毒舌を吐いた後、「結局おまえも俺と同じ道をたどるんだよ」と呪いをかけます。

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 小野政直。本気で井伊谷を小野の手にしたいと思っていたのか、それとも政次と同じように偽りの盾となって今井から井伊谷を守っていたのか。もしかしたら人質にやった瀬名さまと恋仲だったのではー とか妄想は尽きませんが、本ドラマでは息子の政次は見た目もやってることも、父親の政直そっくりですが、心の中は小野家という狭い範疇ではなく、井伊谷に命を捧げている、ということをいよいよ31回から回収していきます。

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 「私には次郎法師さまや亀之氶さまと育んだ幼い頃からの絆があります」

これがもうすべてなんです、わかってあげてよ、おとわ!

 信じろ、おとわ!

ということで隠し里に逃れた直虎は、遂に一族に「政次は味方である」ということを告白。

これ、こんな情報開示やっちゃったら今までの但馬の血のにじむ努力が無駄になるのでは、とか最後までおとわと和尚様だけが真相を知っていた方がドラマチックなのでは、とかいろいろご意見あるかと思いますが、ホントに「但馬悪いやつ」と思っている視聴者もいるようなので、このくらいわかりやすくしてあげた方が但馬報われるかと思います。

 

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 実父を政次に殺されているというのに、この限りない六左の包容力。

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高瀬の場合、乙女の直感で政次の殿への思いを勘付いてるのではないか。

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 母上はつる・とわの仲を幼い頃から見守っていますからね。安定のうなずき

そして次世代からの但馬への熱い信頼!

これは胸熱であった。

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政次はいつも「どこで間違ったのか自分で考えるように」虎松たちに教え諭しながら囲碁の相手をしていた。敵ならばそんなしちめんどくさいことするわけがない。

虎松、ゆきの字の弟の直久、甥の亥之介の次世代たちと但馬の囲碁での交流は、第25回の「材木を抱いて飛べ」の冒頭で描かれています。

政次は、地味に龍潭寺での囲碁を通して次世代たちを育てていたのです。

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ということで遂に政次奸臣説はくつがえるに至ったが、肝心の殿が疑心暗鬼!

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 ま。こんな悪魔の笑顔を見せられると信じてる私でさえ一抹の不安を覚えるけど。。。

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 美しいなー

この対比。

虎松首実検は、私は「寺子屋」とか主人のために自分の子供の首を差し出すっていう歌舞伎を思い浮かべて「まさか亥之介?」と心底思いました。でも、それだと政次が「これぞ小野家のためだ!」って言ってるのと矛盾するので、違うなと。 

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うきゃー

「地獄へは俺が行く」っていうのは、家臣に向けてだったのか。

しかし、前回同様クラクラしたのは、次回32回予告です。 

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うわー

「小野が井伊家を再興する」

これこそ若き政次が父・政直に語った小野の「まことの勝利」ではないか!

いくさ支度は、手甲と同じグレーの鉢巻。やばい、やばすぎる。

そしてこの心配顔の美しい尼姿の直虎さまと、なんだかおだやかな政次。

楽しみすぎます。待ち遠しいです!

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